出会い系サイトで4億円くらい使った話

出会い系サイトに関する詐欺がもっとも盛んだった時代のお話
pato 2023.05.25
誰でも

もう圧倒的に時効だと思うので書かせてもらうと、出会い系サイトで4億円くらい使ったことがある。

現代でこそ、やれマッチングアプリだとか、やれタップルだとか婚活アプリだとか狂ったように広告が出てきて、インターネットを介した出会いってやつはカジュアルかつ一般的になってきたけど、当時はとにかく胡散臭いものだった。

そのネットの出会いを胡散臭くしていた最たる原因、これはもう間違いなく詐欺的な出会い系サイトだった。こいつがあまりに猛威を奮い、それでいて性的な方向に強くアピールしたので、ネットの出会いはちょっと胡散臭い、という風潮が根付いたのだ。当時は、健全に趣味のサイトなどを通じて出会った男女なども、その後、結婚に至ったとしても披露宴の席ではネットで出会ったことを隠して紹介されていたくらいだった。

さて、では、なぜそうなってしまったのか、それには「出会い」といった男女の仲を取り持つサービスの変遷から語らねばなるまい。

人は常に誰かと出会うし出会うことを欲している。それは社会生活を営む生物だからだ。普通に生活していても人と人は出会うが、できるならばもっと多くの人と出会いたいと考えるのが普通だろう。そこには必ず通信技術の発達が絡んでくる。

そう、出会いサービスの変遷の傍らには常に通信技術の発達があり、二人三脚で歩んできたと言っても過言ではない。その過程で破滅的に詐欺に向いた体制が出来上がってしまった、これが実情である。

80年代、不特定の男女と出会う場はもっぱらテレクラであった。電話機を介した出会いで、テレクラ店舗に待機した男性のところに、女性が電話をかけてきて会話、あとは待ち合わせをして出会うというスタイルだ。純粋に出会う目的はほとんどなく、主にお金を介した体の関係に使われていた。

まったくもって余談になるが、僕は「裏モノJAPAN」という雑誌に1年に1回だけ載せられていた、「大晦日からの年越しをテレクラで過ごす24時間耐久」という記事が好きだった。年末年始の特別な時間においてテレクラにかけてくるしかなかった女性の悲哀みたいなものがすごく良かった。

テレクラでは電話をかけてきた女性の取り合いになるわけで、その技法がどんどん発達していった。ちなみに、僕が休日に参加している地域の清掃ボランティアに、むかしテレクラで慣らしていたおじいさんがおり、彼はあまりに電話を取るのがすさまじいものだからいくつかのテレクラを出禁になったことがあるらしい。「修羅僧」という通り名で慣らし、彼が来たテレクラはペンペン草一本も生えないと恐れられたらしい。彼曰く、音が鳴ってから取ったんじゃ遅い、緑のランプが光った瞬間に取るんだ言い、いまだに何らかの機器の緑のランプが点灯すると手が動くらしい。光ファイバーのルーターとかやばいらしい。

このテレクラは80年代の風営法の規制強化により風俗店がぞくぞくと衰退していく中で規制の対象外となり、風俗の代替として隆盛を極めることとなった。

80年代も後半になると、伝言ダイヤルなるサービスに出会いの場が移されていった。電話を介した出会いであり、内容はテレクラと大きく変わらないが、男性側がテレクラ店舗に出向かなくても良い、電話を早どりする必要がない、といった特徴があった。

伝言を録音しておき、それを聞いた相手が返事を吹き込むといったスタイルだ。男性が録音することもあったし、女性が録音することもあった。ただし、テレクラに比べてややリアルタイム性に欠けるので、テレクラと併用されることもあった。伝言ダイヤルに吹き込んでおいてテレクラ、そこが不漁だと伝言ダイヤルになにか反応あるかなと確認に行くスタイルだ。

1989年に、ダイヤルQ2というサービスが始まる。これは、早い話が通話料以外にコンテンツに課金させることができる電話サービスだ。最初はエロい音声を聞かせるサービスが主流で男女の出会いといった場ではなかったが、ここからツーショットダイヤルというサービスに派生していった。

このツーショットダイヤルが、完全に家庭でのテレクラを実現したサービスだった。特定の場所に電話をかけると次々と異性と繋がり、会話を楽しめるといったものだ。このツーショットダイヤルが男女の出会いツールとして覇権を握っていた時期は長く、インターネットが一般に浸透し、スタービーチが登場してネット型の出会いが主流になるまで長らく第一線で頑張っていた。

僕はこのツーショットダイヤルから詐欺的なサービスが増えたと睨んでいる。それ以前にもテレクラや伝言ダイヤルでも詐欺的なものはあっただろう、けれども、ツーショットダイヤルはあまりにその詐欺と相性が良かった。

いちばんの原因は従量制の課金だったという点だろう。多くのツーショットダイヤルが女性と話した時間だけ通話料とは別に料金がかかるというシステムを採用していた。つまり、サービス提供業者としては男性が女性と会話しないと儲からないのだ。それでも、やはりこういうサービスに電話をかけてくる女性はそう多くない。そうなると、業者側が「お金で雇った女性」いわゆるサクラが登場してくることとなった。自然な流れだ。

彼女らは会話をした時間だけ給料が支払われるようになっていた。当然、話を引き延ばしたい。男性側はとにかく会いたい、会ってエロいことしたい、女性側は金を稼ぎたい、という不毛な戦いが全国各地で繰り広げられることとなったのだ。

男女の出会いツールは技術の進歩と同調している。インターネットや携帯電話が普及すると、あっというまに電話での出会いは廃れ、すぐにネットでの出会いが主流となっていった。スタービーチなどの大手出会い掲示板は最盛期で5億PV/月というのだからかなりのものである。無料であったスタービーチに付随して、各業者も有料の出会い系サイトを続々と立ちあげていく。

そこでもやはり、出会いを求める男女数の不均衡から、詐欺的な業者が増えていった。女性にメッセージを送るためのポイントを有料にし、あとはサクラが対応する。会ってエロいことをすると仄めかしつつ会話を引き延ばしていく。ツーショットダイヤルから続くストロングスタイルのサクラだ。

しかも、たちが悪いことにツーショットダイヤルにおける音声でのやり取りから文字のやり取りに衰退しているので、女性でなくてもサクラを担うことが可能だった。結果として、おっさんが、おっさんのサクラ相手に金を払ってエロいことを囁くと言った地獄絵図が展開されることとなった。

この詐欺的な方向に舵を切ったネットでの出会いは、どんどん歯止めが利かなくなり、利用もしていないのに「エロいとこ使いましたよね、お金、払ってください」といった架空請求に繋がっていく。もはやモヒカンバギーや世紀末覇者が登場してもおかしくない治安の悪さ、めちゃくちゃな状況であった。

このときの状況があまりに酷いので、ネットでの出会いサービスは治安が悪い、そう脳裏に焼き付いている人が多い。

さて、技術はさらに発展し、いまやほとんどの人がスマホを持つようになった。もちろん、男女の出会いもそのれ付随してスマホのアプリを使ったものになった。個人的には、ここでかなりの浄化に成功したと思っている。名称を「マッチングサイト」「マッチングアプリ」と変え、男女がカジュアルに使用しているイメージを持たせることに成功したのだ。ツーショットダイヤルや詐欺的な出会い系サイトの時代から考えるとかなりクリーンなイメージになった。もちろん、この時代においても詐欺的なものもあるだろうし、このマッチングアプリで出会う相手は決して安全な相手ではないとは思う。それでも一時期の完全に怪しいだろう、というイメージは薄れたように思う。

さて、前置きがあまりに長くなってしまったが、今回のお話は、そんなクリーンなマッチングアプリよりも以前、それこそ出会い系が最もドロドロしていたネット出会い系の時代、それらの詐欺がもっとも蠱惑的に光り輝いていた時代の話である。

当時、ネット出会い系の詐欺はすでに臨界点を迎えつつあった。様々な詐欺サイトが乱立し、収集がつかなくなっていたのだ。もはやネットに存在する出会い系サイトはすべて詐欺と思ってもいい状態になっていた。そして、詐欺する側も、あまりにライバルが増え過ぎたため、その集客に苦労していた。

そこで業者サイドがとった手法が「SPAMメール」である。

まず、適当に男心をくすぐりそうな出会い系サイトを作っておき、適当にスケベな女の子の書き込みを捏造しておく。で、ツールを使うなりなんなりして男を誘うSPAMメールをゴソッと配信する。

メールの内容が魅惑的で生々しいほど成果は高い。適当に「完全無料です!」とでも謳っておけばいくらでも釣れる。そのメールを受け取った男たちがそのサイトに集結する。もちろん、適当に作ったサイトなので女性はおらず、出会えるはずもない。そもそもサイト自体が機能してないことがほとんどだった。

それでもなぜか使っているとゴッソリとポイントが消費されていき、いつの間にかそこそこな金額の利用料が発生してしまう。あとは、その客に向かってやや脅迫的な請求メールを送っておしまい。なかなか応じないなら屈強な男っぽい声で電話をかければOK。そうすればいくらかはお金が振り込まれてウハウハ、しばらく稼いだらサイトごとドロン、というスタイルが主流だった。

詐欺というと、特定のターゲットに対して綿密に計画して準備して人を騙してといったイメージがあるかもしれないが、この時代に台頭したのはとにかく楽をするスタイルだった。幅広く餌を撒いて、そのうちの数パーセントが引っかかってくれたらそれでいいというものだった。これがネット時代にマッチした。これらは現代の特殊詐欺などにも脈々と受け継がれるスタイルとなった。用意周到な準備も、人を騙すだけの知識も必要なく、幅広く餌をばらまく、それだけだ。

当時、僕のメールアドレスは大変なことになっていた。日に3万人くらい訪問するNumeriというサイトの上部に表示していたので、閲覧者が面白がってあちこちのメルマガなどに登録するのだ。そのメルマガが届くぶんには構わないけど、その業者が売りさばいた名簿がどんどんと訳の分からないところに流れていき、とにかく僕のメールアドレスが訳の分からないところまで一人歩きしていた。海外とかからもきていたので、メアドだけ勝手に世界に通用する器になっていた。だから、これらの詐欺的な餌ばらまきメールが日に100通くらい届いていた。

これらの文面を眺めていると、とにかく自分のところに詐欺サイトに誘導していわけで、明らかに狂っている文面が多い。いかに狂っているかが勝負みたいになってくるのだ。それに圧倒され、見ているだけで頭がおかしくなってくる状態もままありえた。

  「主人とはもう営みがありません。よろしかったら300万円を即金で払いますので私を抱いてくれませんか?こちらのサイトで詳しく相談しましょう。登録が必要だけど完全無料だから大丈夫ですよ。http://...」

なんてメールがくる。これはかなりスタンダードだ。抱いただけで300万を払う。そんなマダムはこの世に存在しない。ただしこの破壊力はなかなか高かった。この後、利用料金がかかる詐欺サイトに誘導したとしても、まあ、抱いたら300万円もらえるし、ちょっとくらいの利用料なら払うか、という心理を狙ってのことだ。男はバカなので初期の頃はこれにけっこう引っかかる人がいた。

「わたしの名前はミカ!エッチ大好きだよ!気軽にゆっき~って呼んでね。エッチしようよー。http://...」

エッチ大好きなのはいいんですけど、いや、むしろ喜ばしいんですけど、なぜミカという名前なのに「ゆっき~」と呼ばねばならないのか。どこからどうとって「ゆっき~」なのか。

「恥ずかしいんですが、その・・・一人でしてたら・・・中に乾電池が入ってしまって取れないんです・・・恥ずかしくて人に言えない。お願い!今すぐうちにきて乾電池を取り出してください!私の住所はこっちのサイトに書いてあります。急いで!http://」

んなもん自分で取れよ。もしくは医者いけ。横着すんな。単三電池か?まさか単一じゃないよな。

「ここだけの話ですが、よくテレビに出ているアイドルです。ちょっと名前は出せないんですけど……。もしよかったらお忍びであったりしませんか? 今日はマネージャーいないから秘密で会えます。はやく涼子に会いに来て!マジで恋する5秒前!」

名前でとる、でとる。

とまあ、詐欺サイトに誘い込もうとあの手この手で誘惑してくる。が、こんなのが日に100通も来ると別に少々のことでは動じなくなるから不思議なものだ。受け取ったらとりあえず読み、一笑に付して削除する、まあそんなものだ。

しかしながら、どうしても心動かざるを得ない、どうやってもアクセスしてみるしかない、夢見る少女じゃいられない、そんなメールに出会ってしまった。これは本当に破壊力が高かった。

以下が、問題のメールだ。

「はじめまして。普段は真面目な顔でOLしてます。でも、たまにエッチな気分になることがあって……そうなるともうしたくてたまらないのです。男の人の前で全裸になって、アジの開きみたいになってしまいます。こんな私とセックスしてくれませんか?http://...」

アジ!!! アジの開き!!!

おかしいおかしい。すごいエロスな描写をしようと心がけたことは痛いほど分かるのだけど、いくらなんでもアジの開きはなかろう。こう、体を開いてウェルカムってのを表現したかったのだろうけど、アジの開きはなかろう。何食って育ったらこんな発想ができるんだ。天才じゃないか。

とにかく、こんなスパイシーなメールを送ってくるサイトが気になってしょうがなかった。とにかく行ってみるしかない。そしてアジを堪能するしかない。そう思ってメールに記載されたURLをガッシリとクリックしました。   

するとまあ、お決まりの展開なんですけど、アジの開きのように体を開いてカマーンとかなってる女など微塵もいなくて、普通に「登録無料!いますぐ登録!さっさと登録、しばくぞ!」みたいな煽り文句が踊るページがうざったいくらいチカチカしながら余裕の風格で佇んでおりました。

でまあ、これまたお決まりなんですけど「無料!」と謳ってるくせに利用規約を読んでみると目立たない場所に「登録のみは無料です、利用料は利用ポイントに応じて規定の料金をお支払いください」みたいなことが書いてありましてね、古典的過ぎる詐欺サイトですよ。

まあ、メールだけなら華麗にスルーできるんですが、こんなコテコテの詐欺サイトを見てしまったらいてもたってもいられない!とにかくまあ、速攻で登録してやったんですよ。そしたらアンタ、登録した瞬間にドコドコと女性からのメッセージが届くようになりましてね、恐らく一斉送信してるんでしょうけど、「体が疼くの」みたいなのが8秒ごとくらいにドンドコ届くんですよ。これは一種のメールボムだぜ。

で、このサイトの凄いところは、それらの勝手に送られてくるメールを読んだだけで5ポイントも消費するというファンキーな設定。それどころか「メール受信料」という名目で送られてきただけでさらに5ポイントかかるというご機嫌な仕様。1ポイント=10円ですから、この勝手に送られてきたメール読むだけで100円かかるということになってるんです。

しかも、これらの「抱いて」とかいう生々しいメールに「抱いてやる」とか返信するだけで50ポイント(500円)相手の写真を見るのは200ポイント(2000円)自分の携帯番号を相手に送るのは500ポイント(5000円)という、山の頂上にある山小屋の売店みたいな値段設定になってやがるんですよ。あそこはカレーが1400円くらいしやがるからな。もうどっからどう見ても詐欺サイトです。どこに出しても恥ずかしくない立派な詐欺サイトです。

そんでまあ、勝手にメール送られてきて勝手にポイントも消費されてることですし、別にいいやって感じで、まさにアジの開きのような状態でウェルカム、詐欺でも何でもこいよとアクセスしまくったんです。こっちがアクセスしていると向こうにアクティブだとわかるみたいで、どこどこメッセージが来るんです。それだけでどんどんポイントが削られていく。

で、あっという間に消費ポイントが1000ポイント(1万円)に達してしまいましてね、画面には-1000ptって表示されていました。ここまで30分もかからなかったと思う。圧倒的な速度でポイントが消費されていった。ここで一度詐欺サイトのほうから機械的な文面で請求メールがきました。

なんか、「ご利用ポイントが1000Pに達しました。3日以内に下記口座まで1万円お振込みください」みたいなことが書いてありました。ご丁寧に「稀に無料と書いてあったから支払わないと言われる方がいますが、当サイトは登録のみが無料です。利用料が必要なことは利用規約に書いてありますので、支払われない場合は法的手段に訴えます」と書いてありました。ぐうの音も出ない正論だな。

こりゃあどうしたもんかなあ、と携帯電話を弄りつつ普通にその件の詐欺サイトにアクセスしてのです。そこで衝撃の事実が発覚しました。

「普通に使える……!」

普通はマイナスポイントに上限ってやつがありまして、だいたい最初の請求は3000円から10000円と相場が決まっていました。これくらいが人間がそこまで抵抗せずに支払う金額だからです。多くの人が「大金」と感じる金額ってのが3万円らしく、それを超えない程度で騙し取る金額の上限が設定されてる場合がほとんどなんです。

だから、ほとんどの詐欺サイトが最大でも10000円を請求できるところで利用を止めちゃう。で、それがサクッと振り込まれる可能性は高いですし、払わなくても督促手数料や遅延金を含んで30000円くらいで請求しちゃう。もうちょっと話が大きくなると額が上がりますが、大体そんな理由で10000円で止まるはずなんですよ。そんなセオリーがあった。

「料金未納のためご利用できません」

普通はこのように表示させてそれ以上は使えなくしていることがほとんどなのに、このサイトはそれらが全然ない。料金を払ってないのにさらに使えるなんてありえない。どうなっているんだ、これは。

10000円の請求が来た時点で驚いて利用を止める客がほとんど、二度とアクセスしないと思ったのかもしれません。だから、止める設定を怠ったか。あるいはシステムのバグかよくわかりませんが、とにかく使えるんですよね。

とりあえず、利用料を払え、詐欺だから払わない、利用規約に承諾したんだから払え、承諾した覚えはない、みたいな不毛な争いがこの後に展開されることは簡単に想像できます。怖い人が電話をかけてきてそういう恫喝があります。でも、そんな鬼気迫るやり取りなのに請求金額が10000円じゃちょっと味気なくないですか。

ここはいっちょ、そんなんじゃ許さないぜって言う気構えを見せて、お手軽では済まない巨額詐欺事件にしてやりましょう。10000円を越えた時点で女から勝手に送られてくるメールは、何らかの号令でもかかったかのようにピタリとなくなり、勝手にポイントが消費されることはなくなりましたが、まだまだこちらからアクションを起こしてポイントを消費することはできます。

とにかく効率的にポイントを消費し、平成最大の巨額詐欺事件にしてしまわねばなりません。最も効率がいいのは相手に自分の携帯番号を送るというサービスで、コレを1回やるだけで500ポイント(5000円)消費するって言うんだから利用しない手はありません。

とにかく、掲示板に載せてる女の子に片っ端から携帯番号を送り続けました。しかしながら、それでポイントを消費していると、同じ相手には3回までしか携帯番号を送れないというクソな仕様が発覚し、仕方ないので上から順番に全部の女性に送りました。

それでもすぐに足りなくなったので、北海道から始めて全国の地域を網羅して携帯番号を送りまくりました。それでもさらに飽き足らず、次に消費ポイントが大きいシャメ閲覧を利用してポイント消費。そのうち、パソコンからツールを使って勝手にメッセージを送り続ける手法を開発し、ドンドコドンドコと自動で「アジの開き」と送ってポイントを消費してみました。

だいたい、最初の10000円の振り込み期限だった3日間ほど暇を見つけてはやった時点で「現在利用できません」と表示されて使えなくなりました。その直前までの利用ポイントはこんな感じでした(再現画像です)。

3999万9950ポイント!(約4億円)

約4億円。ここまで使い込むの本気で疲れた。これは知らずに利用料金が請求されていたという状態ではなく、こちらは確信して利用しているわけですから、本当に請求が来たら争わなければなりません。怖いお兄さんから請求電話がかかってきて、4億円を巡る骨肉の争い、法廷闘争も辞さない構えで最高裁まで戦う心づもりをしていました。果たして4億の請求が妥当なのか、後払いで4億使えるシステムってどうなの、そもそも本当に異性と出会えるサービスだったのか、そのあたりを争点に戦いたかったのですが、請求が全くこないという体たらくぶりでした。来たらアジの開きのように罵倒とかにも耐えるつもりだったのに。

この顛末を見るに、ライアーゲームという漫画のエピソードを思い出します。ライアーゲームでは、負ければ大きな負債を負うという闇のゲームに巻き込まれた主人公の二人が、他のプレイヤーの負債を肩代わりして救済していきます。ライアーゲームを主催する事務局はどんな手段を使っても敗者の負債を回収すると参加者を脅しますが、現実問題として、それが数千万円、あるいは1億円だったら回収できるかもしれませんが、それが何百億ともなると、そもそも人にそこまでの価値がないですから、回収不能となります。主人公サイドの秋山はそれを狙ってゲーム自体には勝利しつつ、どんどん自分の負債を膨らませていくというストーリーです。

これと同じで、当時の詐欺はかなりお手軽なものでした。大量に騙してそのうちの一部が払ってくれればいい。そこに対抗手段がありました。基本的に無視していたらそこまでの深追いはなかったのです。深追いするより、もっと簡単に騙すことができる人を見つけたほうが効率が良いですからね。

男女の出会いのツールは技術の移り変わりと共に変遷していきます。それと同じように人を騙す手段も変遷していきます。昨今では、広く餌を撒いて食いついてきた人を騙すというお手軽な詐欺が主流になっています。これらを仕掛けられた時、それを受け止めるか、スルーするか、それを見極めることこそがこの時代を生きる秘訣なのかもしれません。中にはガチで反論しないとまずい詐欺もあるのですが、最近では多くの詐欺はお手軽に仕掛けられてくるものです。アジの開きのようにそれらを受け止めて真剣に取り合わない心構えも大切なのです。

  

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