パチンコ屋の店名にいちばん使われている単語はなにか?約9000店舗を徹底的に調べた

パチンコ屋の店名に使われる単語を徹底調査した。
pato 2023.04.24
誰でも

(※この記事は2019年時点でのデーターをもとに執筆されています)

先日、古い友人から相談を受けた。

なんでも子供が生まれるらしいとのことだった。友人の表情は晴れやかであり、喜びに満ちていた。将来への夢や希望、期待に溢れる表情とはこのことかと唸るほどのものだった。この世にこんな感情が存在するのかと驚いたほどだ。

しかしながら、同時に悩ましい表情も見せた。なんでも、名前について悩んでいるらしいのだ。友人曰く、「なるべくポジティブで強く、かっこいい名前を付けてあげたい」そうだ。そして、奇をてらった珍しい名前、いわゆるキラキラネームではなく、普遍的な名前が良いそうだ。

どういった名前がいいか?

そう相談を受けたが、なかなか難しいと思った。ポジティブでかっこいい名称、色々と思案を巡らせてみるが見当もつかない。相談された以上、とにかく真剣に考える。食事をしながら、風呂に入りながら、電車に乗りながら、桜木町で、こんなとこにいるはずもないのに。

そうやって考えてみたが一向に思いつかなかった。そんな折、京王線の車窓から見た街並みに、パチンコ屋の看板が見えた。

「これだ……!」

確信したのだ。パチンコ屋の店名にこそ答えに向かうヒントがあると。

基本的にパチンコ屋の店名にはポジティブで強そうでかっこいい単語が用いられることが多い。

「パチンコ虚弱」

とかいう店名だったらちょっと行く気がなくなるかもしれないし、

「パチンコ尻の毛まで抜かれる」

「パチンコ破産」

という店名だったら、ちょっとネガティブすぎて近寄りたくはない。そう考えると、やはりパチンコ屋の店名はかっこいいの塊であるし、ポジティブの塊ではないかと思うのだ。

つまり、2019年現在、約9000店存在するパチンコ屋の店名を調べ上げ、最も使われている単語こそがポジティブでかっこいい単語なのだ。ということで急いで調べてみたので、今日はその結果を発表してみたい。

ただし、「最も使われる単語を調べる」という観点からいくつかのルールを制定した。

1.なるべく単語に分解してカウントする

調べたいのは「もっとも多い店名」ではなく「もっとも使われる単語」だ。その観点でいくと、店名を可能な限り単語に分解する必要がある。例えば以下のような店名の店があった場合について解説する。

パチンコハッピーハッピー国際インターナショナルひばりが丘店

めちゃくちゃ長い店名だが、この場合、以下の単語に分解される。

「パチンコ」「ハッピー」「ハッピー」「国際」「インターナショナル」「ひばりが丘店」

パチンコに1票、ハッピー2票、国際1票、インターナショナル1票、ひばりが丘店1票となる。先に結果を書いてしまうが、今回の調査では調査対象店舗約9000店に対し、登場する延べ単語数は約14000語であった。つまり平均しておおよそ1店舗あたり1.5単語くらいで構成されている。

2.地名はのぞく

今回知りたいのは使われがちな単語である。

つまり、自動的に決まってしまいがちな地名は対象外とした。上記の例でいくと「ひばりが丘店」は対象外となる。ただし、地名自体がダメなわけではない。東京にある「東京」という店名は地名だが、東京以外にある店舗の「東京」は店名である。憧れである。

地名が入る店名はその都度、店舗の所在地を確認し、地名か店名か判定した。「ニューヨーク」などは確実にニューヨークでないことが分かり切っていたので楽だった。

3.大手チェーンはのぞく

これも同じ観点から除外とさせていただいた。チェーン店においては自動的に店舗名が決まっていることがほとんどだ。例えば、日本で一番店舗数の多いダイナムさんは、2019年7月現在、沖縄を除くすべての都道府県に店舗が存在し、その数は400店舗に迫る勢いだ。

早い話、これだけで「ダイナム」が400票なので優勝してしまう。よって、大手チェーンはすべてカウントから外した。ただし、あくまでも大手チェーンのカウント数を除外するだけであり単語自体は有効である。ダイナムさんのチェーン以外の「ダイナム」が存在する場合はカウントされる。

また、どこまでを大手チェーンとするか悩ましいところだったが、べラジオを基準とした。ベラジオの国内店舗数22店舗より店舗数が多いものは全て除外した。もちろん、「べラジオ」も20票除外となった(別の名称が2店舗あるため)。

ただし、あくまでもチェーンの名称が対象となる。

「べラジオPlus鶴見店」などは鶴見店が地名なので除外、「べラジオ」が大手なので除外となるが、「Plus」が有効票となる。

4.「パーラー」「パチンコ」「スロット」は除外

これらの単語も店名というよりは分類に近いので除外とした。

これらのルールにのっとり、都道府県ごとに店名を集計、判断が難しい部分が多いので手作業で集計したところ、本当に気が狂うかと思った。ここだけの話、仕事の合間とかにちょくちょくカウントしていたので、3か月かかってしまった。地獄だ。地獄。生ぬるい地獄が延々と続く感覚だ。

そんな地獄のような集計結果を発表していきたいと思う。

結果発表

まず、全体の統計だが、約9000店に対して店名に使われている単語は2014種類であった。思った以上に語彙は少ない。パチンコ屋の店名においては、ほぼ使われる単語が決まり切っているとみていいだろう。

前述したが、延べ単語数は約14000語なので、だいたい1.5単語で構成されている。思った以上に店名は短い傾向にある。

都道府県ごとに、店舗数と延べ単語数を見てみる。具体的には延べ単語数を店舗数で割った数値だが、これが多いとゴチャゴチャした複数単語の店名をつける傾向にあり、少ないとさっぱりした店名をつける傾向にある。

以下のような結果になった。多い順にTOP5の県を示す。

富山県が突出して高い。唯一、2を超える値となった。

富山県はさほど店舗数が多くないが、その中でも比較的長い名前のチェーン店がその大勢を占めていることが原因と考えることができる。

また、この平均単語数の上位が「北陸地方」および「九州・沖縄地方」に集中している点も注目したい。ここからは憶測の域をでないが、これら二つの地方は、郊外での大型店が多い印象を受ける。大型店は店舗だけでなく、名称にも「メガ」だと「ハイパー」だとかつけたり、数字やアルファベットを店名の後につけることが多い。つまり郊外に展開するほど店名が長くなる傾向がある。それらが平均単語数を押し上げているのではないだろうか。

次に、店名が短い傾向にある都道府県TOP5を見てみる。

島根県がもっとも少ない結果となった。島根県においては、ほぼ1単語で言い切った店名が多いということになる。

これらの県においてはパチンコ店の郊外化、大型店舗化がそこまで起こっていない可能性がある。

また、43位から名を連ねている県においても、個人的な主観になってしまうが、どちらかというと大人しめの県民性的な印象を受ける県が名を連ねている気がする。それらがパチンコ屋の店名に現れている可能性もある。

調査して分かったが、やはり郊外に新しく建てられる大型店などは長い店名の傾向がある。逆に古くからある店舗などは短い傾向だ。これらの県は、郊外店への移行が大人しめで、昔ながらの店が現役で営業しているのかもしれない。ちなみに東京都は1.54語で30位であった。

そしてついに「パチンコ屋の店名に使われがちな単語」を検証していく。ランキング形式で20位から見ていきたい。

第20位には「マックス(MAX)」がランクイン。

最大値、上限(に達した)などの意味合いがあるこの単語はパチンコ屋の店名と相性が良い。出玉がマックスに達している、限界なほどの出玉という印象を客に与えられるからだ。しかしながら、多くの場合、限界の出玉を謡う度合いに比例して限界に近いボッタくり営業になる傾向がある。

また、既存の店名の頭や尻に「○○ MAX」「○○ MAX」と付加するパターンもある。この場合、小規模チェーンの既存の店に比べて設置台数がMAXに達しているなどの意味合いもある。ただ、ほとんどの場合が新店舗において既存の店よりサービスや出玉がMAXに達しているという意味合いで使われる。

筆者もこれまでに何度か店名に「MAX」を謳う店舗を訪れたが、そういった店は赤保留ぐらいの信頼度で開店時の入場曲がMAXの「トラトラトラ」であった。

第19位には「ホール」がランクイン。

ホールには「hole(穴)」という意味があるが、こちらはパチンコ屋の店名としてはふさわしくない。アリ地獄で尻の毛まで抜かれるイメージをもってしまう。おそらく「hall」の方だろう。大きな建物やその中心部分、公共の集会所などの意味合いがある。

この店は大きな建物であるという自負という側面もあるだろうし、なるべく多くの人が集まるようにと願いを込められてつけられるパターンもありそうだ。

筆者も何度かこの「ホール」がつくパチンコ屋に行ったことがあるが、黄色保留くらいの信頼度で朝の入場曲は長州力のテーマ曲であった。

第18位には「メガ」がランクイン。

こちらも既存の店舗名に付け加える形で大型化を表現した店舗が多かった。ただし、マックスとは異なり、店舗名の頭につくパターンの方が多い。

そもそも「メガ」とはメガロポリスなどに代表されるように「巨大な」という意味合いのある単語だ。しかしながら、SI単位系においては10の6乗(1000000)を示すSI接頭語として取り扱われている。このSI接頭語には大きい方向だけを考えても次のようなものがある。

デカ 10
ヘクト 100
キロ    1000
メガ    1000000
ギガ    1000000000
テラ    1000000000000
ペタ    1000000000000000
エクサ 1000000000000000000

大きければ大きいほど良いという概念で行けばペタやエクサなどの接頭語を冠した店名が溢れていても良さそうだが、エクサが1店舗、ペタも1店舗とほとんど存在しない状態だ。接頭語に関しては「メガ」が圧倒的であり、次いで「ギガ」が登場し、それ以外はほとんど存在しない。

もともと「ギガ」や「メガ」はギリシャ語で「巨大な」「巨人の」などの意味があるが、「テラ」以降は4番目、5番目、6番目という意味が続き巨大性が失われる。そう言った意味で「ギガ」や「メガ」ばかりが店名に使われるのだろう。

ちなみに、学生時代に通っていた歴史上類を見ないレベルのボッタクリホールもこの「メガ」の名前を冠しており、あまりのボッタクリぶりに怒った常連の爺さんが「どこがメガだ!ミクロな出玉じゃねえか」と怒っていたのが印象的だった。そのうち「メガ!メガ!」と連呼して怒るようになり、常連の間でムスカと呼ばれていた。

同票で3つの単語が並んだため、ここから同率15位が続く。9000店舗を調査して3つも同票になるか、間違っていたら大変だと何度か確かめたが、やはり同票だった。そんな15位タイにランクインしたのが数字である「21」だ。

店名に数字を入れるパターンはまあまあ多い。その場合、大きく分けて5つの理由が考えられる。少しだけ解説したい。

①店舗の順番を示したもの

こらが最も多いパターンだが、ある名称の店舗があった場合に、それと同じ名前の店舗を同市内、同県内、同地区にオープンさせる場合、2店舗目には「2」と数字が付く。「メガマックス2」などとなるわけだ。店舗数の増加に従ってこの数字が増えていく。

ちなみに1桁の数字は全て店名に使われているが、最も少ないのは「9」で、6回しか使われていない。さすがに9店舗目まで行くとわざわざ店名でカウントしなくなるということだろう。

②台数を表示したもの

その店舗が保有する遊戯台数を店名に入れることがある。例えば「メガマックス482」という店名であった場合、その店に482台の遊技台があると主張しているわけだ。

今回調査した中でも500代、700代、800代あたりにそれらの台数と思われる数字が集中していた。この辺りの台数になると店名で誇示したくなる何かがあるのかもしれない。

ちなみに設置台数を店名に入れていると思われる店名で最も大きい数字は「1700」であった。こちらは大阪府枚方市の「ベガス1700  枚方店さん」で本当にパチンコが1120台、スロットが580台、あわせて1700台あるようだった。

③年を示したもの

おそらくオープンした年なのだろうなという店名がいくつかあった。ただ、調査した中でおそらく年号と思われる数字は「2001」「2004」だけだった。この2つだけだ。しかも「2004」にいたっては1店舗だけなので、そのほとんどが「2001」だった。

おそらくではあるが、当時は新世紀ということもあって「2001」がかなり流行した。その年にオープンした店は勢いあまって店名に「2001」とつけたのではないだろうか。

④名称としてつける

特に年号や台数、店舗数という意味がなくとも「セブン」や「エイト」「ゼロ」などとつけることがある。かっこいいいからだ。

⑤場所を表したもの

これはあまり多くないが、○○号線店という感じで、店の前の国道の号数を店名に入れるパターンもある。これは場所を表す単語であるので、今回の集計では除外している。

これらの理由で店名に数字が使われることは多く、上位にもまだいくつかランクインしている。

ここで15位タイにランクインした「21」は③の「年を示したもの」に入る。おそらく店がオープンした年である2001を店名に入れる場合、そこには新しい世紀、21世紀という文脈がある。それと同じように「21」も「21世紀」という文脈で使われることが多い。

ざっと調べたところ、この21世紀の文脈で店名をつけられた店の多くは、20世紀にオープンしている。そこには「未来」という意識があったのだろう。そりゃそうだ、20世紀にオープンしたから20世紀と店名に入れましょうとはならない。そこには遥か先の未来っぽい何かという意識があったはずだ。

オープンから年月が経ち、いつの間にかその未来である21世紀が到来していた。現実が未来に追いついてしまった趣きみたいなものがある。バックトゥザフューチャーみたいだ。

15位タイに「ジャンボ」がランクイン。

やはりパチンコ屋では巨大であることが正義のようで、メガやマックスと同様にとにかくデカいという意味合いで用いられることが多い。

しかしながら、本来のジャンボはスワヒリ語の「こんにちは」の意味である。そのスワヒリ語から名前を付けられたゾウから派生して巨大なものを表現する言葉として使われるようになった。

僕が生まれ育った街にも「ジャンボ」グループという小規模なパチンコチェーン店があり、何店舗かこの「ジャンボ」の名前を冠したパチンコ屋が存在していた。ある時、そのジャンボグループの店にジャンボ鶴田(プロレスラー)がお忍びでやってくるという何の根拠のないガセネタが広まったことがあった。

僕の従兄弟がジャンボ鶴田の熱狂的なファンであり、「おいジャンボにジャンボ鶴田が来るらしい」と連れ出されたことがあった。「なんでジャンボ鶴田がジャンボに?」と僕の問いかけにも従兄弟は「ジャンボだからだろ」としか答えなかった。

実際にジャンボに行ってみると、もちろんジャンボ鶴田はおらず、朽ち果てる寸前みたいな寂れた店内で死にかけた爺さんがギンギラパラダイス(3回権利)を打っているだけだった。ジャンボ鶴田の持つ圧倒的な生命力の欠片すら感じられない光景がそこにあり、従兄弟は泣いていた。

従兄弟はあれがジャンボ鶴田の関係者かもしれないと一縷の望みにかけて、その生命力のない爺さんに「こんにちは」と話しかけていた。ジャンボとは本来は「こんにちは」の意味なのだ。

「会館」が15位タイにランクイン。これは非常に悩ましかったのだけど「会」と「館」に分解することはせず、あくまでも「会館」としてカウントした。(館がもっと上位にランクインするくらい多い)

集会や会議をするための建物を「会館」と表記する。人に会うための建物という意味合いだろう。しかしながら、本来は中国の言葉であり、同業者や同郷者、同族などのコミュニティや団体が所有する建物を指していた。

ほとんどの場合が「○○会館」という名称で使われるが、ざっと調べたところ、これらの多くは設立年が古い。それこそ昭和の時代からやってますといった年季の入った店舗が多い。もちろん、これらは減少傾向にあり、現存する店舗はほとんどが老舗の部類に入る。

僕が学生時代にアルバイトしていたパチンコ屋も完全に昭和レトロな駅前店舗で「○○会館」という名前だった。そこの店長が鬼のように恐ろしいスキンヘッドで、いまだにその時のことを夢に見るくらいだ。

第14位には「キング」がランクイン。

言わずと知れた「王様」という意味であり、トップであることを意味する単語のため、好んで店名につけられるようだ。

面白いことに、この「キング」は全国まんべんなく存在する。一律のチェーンというわけでもないのに、まんべんなく分布する傾向にあった。中には「キングオブキングス」という店名で一挙に2票も獲得するケースがあった。

キングという店名で思い出深い店舗がある。その店は「キング熊野」という店名だったように思う。いま調べてみたら「ニューキング熊野」という店名でいまも絶賛営業中らしいので、当時からその店名だったのか、あるいは店名に「ニュー」をつけてリニューアルしたのかは定かではないけど、確かに今も現存していた。

この店は、とにかくどでかい王様のモニュメントが屋根に鎮座しており、車で店の前を通ると嫌でも目立つ店舗だった。住んでいる場所から遠かったので打ちに行ったことはなかったけど、車で前を通るたびにすげえ目立つ店舗だなと考えていた。

ある時、合コンというか食事会で知り合った市内の女子大生が「どうしよう、家に帰れなくなった」というので僕の車で送っていくことになった。これってもしかしてお持ち帰り的なことできるんじゃないか、血気盛んだった大学時代の僕も色々と沸き立った。

車内で会話していると「わたしってすごいバカなんだよ」とか言うので、「そんな謙遜しないでも」みたいな感じで会話し、いい雰囲気のまま車は山越えのルートに入っていった。これはいけるぞ。

「いつもこの道を通るの?」

「そうだねえ、お母さんに送ってもらう時は通るよ」

このルートを進めばあの「キング熊野」がある。

「あ、じゃあさ、この先にめちゃくちゃデカい王様がいるパチンコ屋あるでしょ?」

僕がそう切り出すと、彼女は心の底から困惑した表情を見せた。

「王様?」

まったく心当たりがないという表情を見せる。いやいやいや、ここを通ることがあるならあのインパクトに気が付かないはずがない。

「ほらあるじゃん、キング熊野とか言う名前で、絶対に見たことあるよ」

すると彼女が叫びだした。

「あーーー! あれ王様だったんだ!」

王様じゃないならなんだと思っていたんだ。

「わたしあれ、店長とか店の偉い人だと思ってた!」

この子、けっこうバカなのかな。どう考えてもトランプの13みたいなやつが鎮座してるやんけ。だいたい、あんな巨大なモニュメントを自分で作って飾る店長がいたらけっこうな自己顕示欲だぜ。

「いやー、店長じゃないでしょ。だってキングって店名だよ?」

「いいや、わたしは絶対に店長だと思う」

「いやいやいや、どう考えても王様でしょ。トランプの13の絵柄だし」

「絶対に店長!」

なんだか彼女が店長だと譲らないので険悪な感じになってしまい、むしろ王様だろうが店長だろうが本質的にはどうでもいいのだけどそれが言い出せず、その後の会話がなくなってしまった。もちろん、お持ち帰り的なエトセトラもなく、そのままキングの前を通り、彼女を家まで送って別れた。

今でも思うんです。あそこで甘くスイートに「そうだね、あれは店長だよ、間違いない」と言っていればお持ち帰り的なこともいけたかもしれないって。

アルファベットである「J」が13位にランクイン。アルファベットを単独の単語として店名に用いる例は多い。先に結果だけをお伝えすると、この「J」よりも上位に「P」がランクインしている。この2つが上位ではあるが、他のアルファベットもまあまあ多い。

順位にすると以下のようになる。ちなみにこれは大手チェーンもカウントしている。

P
J
D
A
B
M
S
G
K
N
E
P
V
T
X
R
Z
C
F
その他のアルファベット

「P」「J」に次ぐ多さである「D」はおそらく大手チェーンの「D-stationさん」の影響が強い。「M」や「G」が比較的に上位なのはホテル・カジノ統合型リゾートを展開するMGMを模した店名の店が多いことなどに起因する。それ以外の序列はほぼ「かっこいい印象を受けるアルファベット」順に並んでいるのかもしれない。

では、パチンコ屋の店名に「J」をつける場合、そこにはどんな意図があるだろうか。「J」を名乗る店のほとんどが「こういう理由でJつけてます」とは明かしていないので定かではないけど「Japan」の意味合いが強いと思う。おそらくではあるけどJリーグの影響が強い。

1991年に発足したJリーグは、「日本の」という意味で「J」がつけられている。その影響でJをつける店が増えていったんじゃないか、そう予想する。

またもや巨大は正義とばかりに「大きい」を表す「ビッグ」がランクイン。本当にパチンコ屋においては大きいことが正義なのである。

ただし、このBIGには店の大きさだとかそういった意味合いよりも出玉のビッグさの意味合いが強い。パチンコにおいて、特にスロットにおいては「ビッグボーナス」と呼ばれるボーナスをいかに引けるかが重要となってくるからだ。

それに対して、スロットにおいては、いわゆる「REG」と呼ばれるレギュラーボーナスというものも存在する。その意味通り、こちらがレギュラーのボーナスで、ビッグボーナスがどでかいボーナスということだが、ほとんどのユーザーがビッグボーナスが通常のボーナスで、レギュラーボーナスの方を小さい方のしょぼいボーナスと認識している。同じことかと思うかもしれないが、この認識の違いは重要だ。

この概念がある限り、レギュラーボーナスを引くと「通常の奴だね」とはならず「しょぼいほう引いてもうた」と悔しさがこみあげてくるのである。

ちなみに、ひとむかし前はビッグボーナスで400枚から711枚のコインが出るものだった。1枚20円程度と考えるとやはりビッグなボーナスである。しかしながら、スロットに襲い掛かった昨今の規制に次ぐ規制で、このビッグボーナスの出玉はどんどんしょぼくなり、疑似ボーナスという存在を経て、下手にベルの引きが悪いとビッグボーナスで15枚、みたいな、どこがビッグやねんというボーナスになり果てている。15枚なんてひとむかし前のちょっとしたスイカの払い出し枚数だぜ。

さて、ビッグボーナスと言えば思い出すことがある。大学時代に「VICTORY」という店がグランドオープンするというので友人の西川君と夜を徹して並んで突入したことがあった。

今ではそうでもないかもしれないが、当時は新しい店がオープンするとなったらそりゃもうお祭り騒ぎで、絶対的な勝利が約束されたものだった。夜を徹して並ぶだけの価値があった。

西川君とスロットコーナーに突入すると、花火というスロット台の「たまや~」というランプが全台点灯していた。モーニングだ。花火どころかスロット全台にモーニングが仕込まれていたのである。

このモーニングとは、現代ではもう実施できないサービスだが、朝一の状態で何台かがもうボーナスが揃える状態に仕込まれているというものだった。さすがグランドオープンである、スロット全台モーニングとは豪気な話である。

興奮した僕と西川君は「全台モーニングとはすげえな!」と興奮して打ち始めた。やはり数百台あるスロット全台にモーニングが仕込まれており、あちこちでビッグボーナスが始まった。

「全台ビッグボーナスじゃねえか! よっしゃ、いくぜ!」

ビッグボーナスを揃え、興奮気味に西川君の台を見ると、西川君だけレギュラーボーナスが仕込まれていた。しょぼいほうのボーナスだ。本当に、徘徊して確かめたから間違いなくそうだといえる。数百台のスロット全台がモーニングでビッグボーナスが仕込まれていたのに、西川君だけしょぼいほうのやつだったのである。僕はあの時の西川君の顔をいまだに夢に見る。それくらいレギュラーボーナスとは罪深い存在なのだ。

第11位には「クラブ(CLUB)」がランクイン。

クラブとはもともと「会員制の集まり」「社交団体」「親睦団体」などを指す言葉であり、転じて「共通の趣味・興味を持つ仲間が定期的に集まって形成する団体」のことを指すようになった。つまりパチンコ屋にこのクラブをつけるということは共通の趣味、つまりパチンコやスロットの演出などに脳が灼かれてしまったような共通の仲間が集まる店、ということになる。

「クラブ」単体の店名はほとんど存在せず、必ず「○○クラブ」か「クラブ○」みたいな使い方をされる。特に「クラブ○」という店名の場合は○にアルファベットが1文字入る使い方をされがちである。

本当にこれは個人的感覚で申し訳ないのだけど、クラブを「club」と表記し、店名の看板もわけわからんほどグニャグニャの筆記体で書いたような店はしゃらくさい店が多い。そのしゃらくさい店はたいていスロットコーナーの照明が暗い。あと、ジュースの自販機が見たこともないメーカーの物であることが多い。しゃらくさい。

そしてここから、ついにTOP10の発表。TOP10からは票数も発表する。

第10位には105票を獲得して「ラッキー(LUCKY)」がランクイン。

言わずと知れた「幸運」という意味の単語で、パチンコ屋においては幸運であることだけが重要なので、それがそのまま店名になったパターンだ。

最も多く使われているのは福岡県である。その他にも京都、愛知でも多かった。これらの県の老舗店舗で使われることが多い印象がある。ちなみに九州を中心にチェーン展開をするYUKOLUCKYグループのLUCKYは大手ということで除外されている。

幸運を表す「ラッキー」はもともとはドイツ語だ。ギャンブルに勝った時に使われる言葉として定着してきたといわれている。

学生時代に僕が良く行っていたパチンコ屋に、いつも「LUCKY」と背中に書かれたジャンパーを着てくる爺さんがいた。どうやら爺さんはそのLUCKYを背負うことで幸運が訪れ、パチンコに勝てると盲信している節があり、けっこう厚手のジャンパーなのに、真夏にも着てきて汗だくになっていた。

しかもそのLUCKYがワッペン的な感じで貼られたものらしく、けっこう年季が入ったものだたのでいつしか「L」が剥がれ落ちてしまった。僕はその剥がれ落ちた「L」をエキサイトジャックのコーナーで見つけた第一発見者だった。

こうして爺さんのジャンパーに刻まれた刻印は「UCKY」となってしまい、常連たちから人知れず「ウッキー」と呼ばれるようになり、そのうち「猿」と呼ばれるようになった。

そのパチンコ屋はあまりにボッタクリが酷すぎて、このまま通い続けたら生命の危機があると判断して通わなくなってしまったのだけど、数年たってフラリとウンコをしに立ち寄ったところ、その爺さんがいた。けっこうな真夏だったけどやはりあの厚手のジャンパーを着ていて汗だくになりながらギンギラパラダイス(3回権利)を打っていた。

爺さんが立ち上がってトイレに向かったので、後ろに回り込んでおそるおそるジャンパーの刻印を見たところ、長い年月をかけてかなり部分が剥がれ落ちてしまい、「U」だけが残っていた。

店内をくまなく探すと通っていた当時の常連の姿があったので、あの爺さんのジャンパーUだけになっているけど今のニックネームはどうなっているんだと問い詰めたところ「UWFインターナショナル」になっているとのことだった。まさにUの遺伝子を継ぐものだ。

15位の「21」に引き続き、数字の「7(SEVEN、セブン含む)」が109票でランクインしてきた。

ほとんどが店名に数字を使うパターンの「④名称としてつける」に該当する理由でつけられていた。①店の順番を示したものとしてつけている例はあまりない。7番目の店までカウントしていたらけっこうしつこいなって感じになってしまうからだろう。②台数を示したもの、もさすがに7台しかない店は存在しない、③オープンした年、も西暦7年はローマ皇帝アウグストゥスがヘロデ大王の子でユダヤ属州総督のアルケラオスを解任した年だ。まだパチンコなんてものは存在していない。こういった理由でその大半が名称としてつけていると予想される。

この「7」という数字はパチンコ屋の象徴ともいえる数字だ。この7が揃えば嬉しいし、決して悪いことが起こらない。パチンコ屋とはそういう場所だ。そう言った意味で、この数字を店名に入れる店は多い。ある意味真っ当な結果といえる。ちなみに「セブン」などの名称もこちらの「7」でカウントしている。

では、パチンコにおいてこんなにも「7」が重宝される理由は何か。そこを少しだけ紐解いてみよう。実はこれは「ラッキーセブン」からきている。

アメリカメジャーリーグの優勝がかかった大切な試合、その7回に事件が起こる。打ち取られたと思われた凡フライが風に運ばれてホームランになってしまったのだ。そしてそのまま優勝が決まってしまった。その出来事から「ラッキーなことが起こった7回」としてラッキーセブンとなった。いまでもプロ野球では7回になるとラッキーセブン的な何かが盛り込まれることがあるし、ファミスタだと全打者が絶好調になってバットを振り振りする。

なぜそのアメリカの「ラッキーセブン」が日本のパチンコに取り入れられたのか。最初にパチンコに「7が良いもの」として取り入れたのは三共が1980年に発売した「フィーバー」という機種といわれている。

三共-フィーバー(SANKYOヒストリーより引用)

三共-フィーバー(SANKYOヒストリーより引用)

1980年、インベーダーなどのテレビゲームブームもあり、パチンコがやや下火になりつつあった苦境の時代に発売されたものだった。この機種は現代の図柄が揃ったら大当たりになってアタッカーが開いて球がたくさん出てくるというシステムの礎を築いたとまで言われている。

真ん中のドラムで太陽絵柄が3つ揃うと上部セグの数字が変動し、そこに「7」が表示されると大当たりとなる。するとアタッカーが開き、そこに球を入れると球が何倍にも増えて払いだされてくるというものだった。いったん「7」が表示されるとこのアタッカーがぶっ壊れたかのように延々と開き、打ち止めになるまで出続けたというのだから当時としてはなかなか過激な台だった。

この「フィーバー」は大ヒットし、そのシステムは後のパチンコ機に大きな影響を与えることになった。そこで「これがでたらすごいことになる」という「7」も良いものとして扱われるようになったというわけだ。いまやパチンコもスロットもほとんどの機種が「7」を搭載している。

ちなみにこの「フィーバー」は三共の登録商標であり、三共とその関連会社だけがのフィーバー表記を使用可能だ。この1980年の「フィーバー」から延々と後継機が出ており、つい先日に導入となった「Pフィーバー炎炎ノ消防隊」にもしっかりフィーバーが受け継がれている。

8位には「プラザ」が124票でランクイン。

「プラザ」は単体で店名として使われることもあるが、最も多いのが「〇〇プラザ」という使われ方だ。

本来、プラザにはスペイン語で「街中の人通りの多い広場」という意味合いがある。そういった意味では、多くの人に出入りしてもらえる繁盛店になって欲しい、という願いから店名に使われるのかもしれない。

なんかプラザに関するパチンコエピソードないかなと思い出そうと思ったけど、そもそもこれまでにプラザという店名の店に行ったことがないので何も思い出せなかった。

ちなみにもっとも多く使われている都道府県は埼玉県だった。埼玉はプラザ好き。

「超越した」などの意味である「スーパー」が141票を獲得して6位タイにランクイン。

単独でつけられることはなく、既存の店舗名の頭につけられるケースが多かった。これまで営業していた店舗が改装かなにかで「スーパー○○」とちょっとパワーアップ感を出すためにつけられるなど、これまでのものにプラスアルファといった感じだろうか。

大阪でもっとも多く使われているが、それ以外は東日本で多く、西日本ではやや少ない傾向があった。

「何かを超越する」という意味でもちろん「スーパー」は良い意味の言葉なのだけど、パチンコ屋においては誤魔化しの意味で使われることも多い。

既存店舗をリニューアルして「スーパー」と冠していても、なにも超越してないどころか、リニューアル費用の回収のためによりボッタクリになるのが関の山である。ただスーパーと冠しただけでなんかすごいことになったかもしれないと醸し出せ、本当にスーパーになったのはボッタクリ度合いだけなんてことがよくある。

これは「ビッグ」の項目でも説明した「ビッグボーナス」にも共通する。あまりに出玉がしょぼくなりすぎて全然ビッグじゃなくなったビッグボーナスだが、その一つ上の「スーパービッグボーナス」みたいなボーナスを搭載した機種も増えてきたのだ。これだって、そもそも「ビッグボーナス」がしっかりと「ビッグ」であれば、その上位存在など必要ない。ここでも誤魔化しとしての「スーパー」が垣間見えるのだ。

僕が学生時代に通っていたパチンコ屋もそのような誤魔化しの意味でスーパーを使っていた。

当時は今のように規制が厳しくなく「今日はめちゃくちゃ出る日だよ」と客に期待される出玉イベントがあちこちの店で開催されていた。ただ、その多くがいわゆるガセイベントで、めちゃくちゃ出る日と煽っておいてめちゃくちゃでない日であった。当時は地方ほどガセイベントの比率が高かったように思う。

僕の行っていた店は本当に酷くて、そのガセイベントが常軌を逸したレベルだった。開店時に「7が揃っている台は最高設定!」と大々的に謳い、それに騙された爺さんが店に突入し、スロット全台が7が揃った状態をみて「ひい、全台が最高設定や」と驚愕して腰を抜かしていた。

もちろん、そんなことはありえなくて、全台最高設定どころか、おそらく普段より設定状況が悪かったように思う。ここまで開き直ってガセイベントが開催できるんだと妙に感心したのを覚えている。

しかし、この店はそれだけでは済まなかった。そんなガセイベントが続き、もう誰もそんなイベントのことなど信じないオオカミ少年状態になったとき、異変が起こった。

「みなさん、店長山田のガセイベントにうんざりしていませんか? ということで前の店長はクビにして新しい店長を迎えました。それを記念してガチのイベントをやります!」

という期待が膨らむ予告がなされたのだ。しかしながら、もちろんこのイベントもしっかりと普通にガセイベントで、まあその部分は予想していたから大した問題ではないのだけど、問題は、店長山田もクビになっておらず、単に店長山田からスーパー店長山田に代わっただけだったのだ。イベントだけじゃなく店長が変わるとこまでガセかよ、と妙に感心したのを覚えている。

このように昨今のパチンコ屋では「スーパー」は本来の悪い部分を誤魔化すときに多用されることが良い。注意が必要だ。

スーパーと同じく141票を獲得して6位タイにランクインしたのは「館」だ。

この単語は店名というより、店の内容を表す場合によく用いられていた。「やかた」という読みではなく、「かん」という読みで使われることがほとんどのようだ。

例えば、「ラッキー」という店があった場合、その横に「ラッキー」のスロット専門の店があり「ラッキースロット館」という使われ方をされている。それ以外にも低貸し専門であることを示す「ライト館」や「1円館」などの使われ方をしている。

東京、埼玉、神奈川の3都県が突出して多く、その大部分を占めている。おそらくこれは、人口密度が大きい密集都市であることが関係していると予想できる。これらの都市は郊外よりも駅前の密集した地域に店舗が多く、大型店舗を建設することが難しい。よって、このビルのここはパチンコ館、こちらのビルがスロット館、と同一店名でありながら建物が分かれるため、それぞれを○○館として表記する必要性が生じる。

ちなみにその「館」の使われ方を見てみるとやはり圧倒的に「スロット館」「パチンコ館」という使われ方が多く、次いで「A館」「B館」そして「ライト館」となっている。なかには「スポーツ館」という、まさか本当にパチンコ屋でスポーツするわけじゃないだろうにという使われ方も存在した。

第9位の「7」に続いて数字がランクインしてきた。147票を集めて5位と大健闘である。この「2」の場合は、「7」と異なり、店の順番を示す使われ方がほとんどだった。つまり、2番目の店という使われ方だ。

例えば「7」の場合は数字より名称としての使われ方もあるので「セブン」というも多いが、「2」の場合は「ツー」という表記は少なく、ほとんどが数字の「2」であことが特徴だ。

全都道府県でまんべんなく使われているが、突出して多いのが「東京」「大阪」「広島」である。大都市を有する場所で多用されているのは、第6位の館とも同じ理由かもしれない。大型店舗を作るより複数店舗となるので「2」が多く使われる。

ちなみに、「○○○○」という店が好調でこりゃ2店舗目だと「○○○○2」をオープンさせた際に、2店舗目を盛り立てるために1店舗目のほうで極度のボッタクリを行う店があったりする。これが行き過ぎると、そのまま最初の方の店が客が戻らず、ぶっ潰れることがあるのだ。

そこそこ昔の話になるけど、うちの近所にもそんな店があって「○○○○2」という店だけが取り残されていて、いつしか、その最初の店の存在は忘れ去られ、「2」があるのに「1」がないよね、みたいな状態になっていた。

その「2」の店で打ってる客に話しかけては「この店は2ってついてるのに1がないんだぜ」という話から入って、必ず最後は「1の方の店はいまでも秘密裏に地下で営業する闇パチンコになっていて、そこは普通の店の10倍のレートになっている。俺はその店をずっと探している」と、そんなものあるわけないんですけど、真顔で言うおじさんがいて、人知れず都市伝説おじさんと呼ばれていた。

毎日のように来ていたのに、ある日を境に急に来なくなったので常連たちの間では「都市伝説おじさんはきっと1の方の店を見つけたんだ」ということになったらしい。

第4位には149票を獲得してアルファベットの「P」がランクイン。前述したようにアルファベットで最多の得票となった。

ほとんどの店が「P」をパチンコという文脈でつけており、「P○○」のように店名の頭に着けることで、パチンコ屋であることを示す記号のような役割が多かった。ぜんぜん脈略ないけど、日本最北端のパチンコ屋にもこの「P」が使われている。

店名の話からは逸れてしまうかもしれないが、この「P」は最近ではほとんどのパチンコ台の機種名の頭につけられている。いわゆる「P機」と呼ばれるものだ。これは2018年2月に改正された風営法、それに沿った仕様を備えた新基準機のことを指す。

最初のP機が「Pフィーバー革命機ヴァルヴレイヴW(2018)」であり、このように頭に「P」とつけられるようになっている。それまでは「CR」という名称がつけられており、こちらの記憶が強い人も多いのではないだろうか。

この「CR」という表記の凄いところは、この2文字がつくだけでああ、パチンコ台のことだな、とだいたい分かってもらえる点にある。存在しない機種、ありえない機種でも「CR仮性包茎」と表記すれば「亀頭直下埋没Vカット法リーチ」「皮が外れたらズル剥けラッシュ突入だ!」とか存在しないリーチ演出まで思い浮かぶ。それが「CR」のすごいところだ。

僕が通っていたパチンコ屋の常連に皆から「アイスコーヒー」と呼ばれているおっさんがいた。なぜアイスコーヒーと呼ばれているのか諸説あるらしく、一時期、アイスコーヒーにはまって朝の行列に持参していたからだとか、そのアイスコーヒーをこぼしてしまってあちゃーとなっていたら偶然にもこぼれたアイスコーヒーの色と彼の肌の色が同じだったとか、様々な説が飛び交っていた。

「今日さ、朝の入店の時にアイスコーヒーが何かメモをおとしていったのよ」

匿名掲示板にはパチンコ屋というカテゴリーがあり、その地方ごとの店のスレッドが乱立してる場所があった。通っていた店のスレッドは主に目立つ常連の悪口が熱心に書き込まれていた。そして、そこに常連アイスコーヒーがとあるメモを落としたと書き込まれていた。

「どんなメモなの?」

「なんか”CRアイスコーヒー”とか書いてあって、演出の内容がメモしてあんの」

どうやらアイスコーヒーを自分を題材に架空のパチンコ台を考え、その演出をメモしていたらしい。

「最強リーチ 漁師最終決戦リーチ ★★★★★ 漁師を倒せば大当たり」

同じく常連の漁師と呼ばれる男は屈強な男で、その男との最終決戦が最強リーチに設定されていた。

「激熱リーチ 徳さん説得リーチ ★★★★ 徳さんがギブスをしていたらチャンスアップ」

同じく常連の徳さんが「地元に帰る」と言い出すのをアイスコーヒーが説得するリーチだ。

「チャンス ウザガキ軍団を抹殺せよ ★★★ ウザガキ軍団がオレンジのシャツを着てたらチャンスアップ」

店によく来ていたウザガキ軍団をアイスコーヒーが殲滅したら大当たりとなる。

そのようにアイスコーヒーが考えた「僕が考えた最強のパチンコ台」の演出が延々と書き込まれていた。演出が発表されるたびに匿名掲示板が湧きたった。

「おい、カラカッサの演出はないのかよ」

匿名掲示板にそのように書き込まれる。 実は当時、僕自身がこの店で「カラカッサ」と呼ばれてめちゃくちゃ悪口を書き込まれていた。

「ハイワロ演出 カラカッサダンスリーチ ★ カラカッサが夢を諦めなかったら大当たり」

なんだよその演出。しかもいちばん信頼度が低いハイワロ演出(ぜったいに当たらないので演出を見ながら「はいはい、ワロスワロス」と心の中で思う演出)じゃねえか。これCR浜崎あゆみのパクリだろ。いちばんの雑魚が担うポジションだろ。せめて最終決戦リーチの相手をカラカッサにしろよ。

匿名掲示板の店のスレッドを席巻した「CRアイスコーヒー」のメモ。やはりCRとつくだけでパチンコ台のことだと理解されるこの表記はなかなかすごいものだ。このCR表記が廃止され「P」となった。パチンコ屋の店名にも数多く使われるこの表記がCR表記と同じくらいパチンコ台のことだよね、となっていくのか興味深いところだ。「Pアイスコーヒー」ではカラカッサの演出はせめて★★★くらいのやつにして欲しい。

そして、いよいよTOP3の発表だ。

157票を獲得して「ランド」が見事にTOP3入りを果たした。

ランドとは「土地」や「領域」といった意味がある。空の対義語として「陸地」としての意味や海の対義語として「陸上」としての意味もある。パチンコ屋の店名に使われる場合はほとんどが「領域」としての文脈だろう。

そこまで多い印象のなかった「ランド」だが、全国にまんべんなく分布していて着実に票を伸ばしていた。ルール上カウントされていないが、大手チェーンにも使われており、実際にはこの順位以上に「ランド」の店が存在する。

第2位には数字の「1」がランクイン。197票も獲得していた。

この「1」は最高に汎用性が高かった。まず、店舗の順番を表すのに使われることがあった。「1番目の店」「1号店」といった意味合いの「1」だ。それと同時に「ワン」としての使用用途も多かった。特にアルファベットと組み合わせて「K-1」「G-1」といった感じでの用途も多かった。

これら二つの意味合いとして使われる機会が多く、納得のランクインであった。ちなみに最も使われているのは兵庫県。個人的には「1」が1位である方が、1だけにねと丸く収まるのだけど、この「1」を凌駕する単語が存在した。

ということで、1位の発表だ。

堂々の第1位は「ニュー」であった。219票と圧倒的な票数だった。

新しいものであることを表す単語である。多くの場合が、既存の店舗の改装などを経て「ニュー」を冠して再オープンするパターンだった。また、別にリニューアルしたわけでもないのに最初から「ニュー」を冠している場合もあった。

語感的に、あらゆる単語の頭につけても違和感がない単語なので、満遍なく使用され、全国のほとんどで票を獲得した。特に「東京」「神奈川」「東北地方」で根強い支持を集めていた。

パチンコ屋の店名に最も用いられるのは、「ニュー」である。新しい、である。パチンコ店は常に新しさを求めている、そんな気持ちの表れなのかもしれない。

以下が集計結果。

皆さん忘れてしまったかもしれないが、これはそもそも知り合いの子どもの命名に関する調査だった。なかなかポジティブな単語が並んだように思う。TOP3の「ニュー」「1」「ランド」あたりから取って「新一ランド」でどうだろうか、と提案したところ、コナンの最初で高校生探偵工藤新一が黒ずくめの組織の連中に小さくなる薬を飲まされた遊園地みたい、と言われて拒絶された。

補足

2019年の調査時には9000店舗だったパチンコ屋ですが、2023年時点で6600店舗と、信じられない勢いで店舗数が激減しています。

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